講談社に就職するには？編集者を目指す人のための準備と対策

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「週刊少年マガジン」「ViVi」「FRaU」。書店で見かけるこれらの雑誌を手がけているのが、講談社です。漫画から文芸、ファッション誌まで幅広いジャンルを扱う総合出版社として知られています。

出版業界に興味がある人なら、一度は「講談社で働いてみたい」と考えたことがあるかもしれません。実際に講談社に入るには、どんな準備が必要なのでしょうか。

講談社ってどんな会社？

講談社は1909年創業の老舗出版社です。創業当初は実用書や児童書を中心に扱っていましたが、現在では日本の出版業界を代表する総合出版社として、多様なジャンルの書籍・雑誌を世に送り出しています。

漫画では「週刊少年マガジン」「なかよし」といった雑誌が有名。「進撃の巨人」「五等分の花嫁」「ダイヤのA」など、幅広い年齢層に支持される作品を生み出してきました。

ファッション・ライフスタイル分野では「ViVi」「with」「VOCE」など、若い女性に人気の雑誌を多数展開。文芸では純文学誌「群像」や小説誌「小説現代」、講談社文庫などがあります。

さらに、学習図鑑「動く図鑑MOVE」や新書シリーズ「講談社現代新書」「ブルーバックス」、週刊誌「週刊現代」「FRIDAY」、Webメディア「現代ビジネス」など、その守備範囲は驚くほど広範です。

近年は電子書籍やWebコンテンツにも注力しており、デジタルと紙の両方で読者にアプローチしています。

講談社に就職するには

講談社で働く方法は、大きく分けて2つあります。

ひとつは定期採用（新卒採用）。大学や大学院を卒業予定の人を対象にした、いわゆる新卒一括採用です。講談社の新卒採用サイトでは、毎年の募集要項やエントリー方法、先輩社員のインタビューなどが公開されています。

もうひとつがキャリア採用。社会人経験者を対象とした中途採用で、特定の専門スキルや実務経験を持つ人材を随時募集しています。講談社キャリア採用サイトで詳細を確認できます。

新卒で入る以外にも、別の会社で経験を積んでから挑戦する道があることは、知っておいて損はありません。

講談社にはどんな職種がある？

講談社の仕事は「つくる」「届ける」「支える」の3つに大別されます。それぞれの分野で、高度な専門性を持った職種が用意されています。

つくる：編集職

編集職は、講談社が発行・提供するコンテンツを生み出す仕事。ジャンルごとに専門性が分かれています。

コミック

コミック編集は、週刊少年マガジンやなかよし、別冊少年マガジンといった漫画雑誌、単行本、マンガアプリを担当します。
作家との打ち合わせからネームチェック、単行本の企画まで、作品が読者に届くまでのすべてに関わります。担当作家とは深い信頼関係を築きながら、時に厳しい意見も伝えなければなりません。

文芸

文芸編集は、純文学誌「群像」や小説誌「小説現代」、講談社文庫やノベルスなどを扱います。
作家と共に作品を作り上げるプロセスは、他のジャンルとはまた違った緊張感があります。新人賞の運営や文学賞の事務局業務も、文芸編集の重要な仕事です。

ファッション・ライフスタイル誌

ファッション・ライフスタイル誌編集では、「ViVi」「with」「VOCE」といった女性向け雑誌やそのWeb版を制作。
トレンドを敏感にキャッチし、読者が「今、知りたい」情報を企画に落とし込みます。撮影現場への立ち会いや、モデル・スタイリスト・カメラマンとの調整も日常業務です。

幼児・児童書

幼児・児童書編集は、絵本、幼児向け雑誌「げんき」「おともだち」、児童文学シリーズ「青い鳥文庫」、学習図鑑「動く図鑑MOVE」などを担当。子どもたちの知的好奇心や情操を育むコンテンツ作りに携わります。

ノンフィクション・実用書

ノンフィクション・実用書編集では、「講談社現代新書」「ブルーバックス」「講談社学術文庫」といった知識系の書籍を企画・編集。社会問題、歴史、科学など幅広いテーマを扱い、専門的な内容を一般読者にも分かりやすく伝える工夫が求められます。

週刊誌・Webメディア

週刊誌・Webメディア編集は、「週刊現代」「FRIDAY」などの週刊誌や、「現代ビジネス」「クーリエ・ジャポン」などのWebメディアを運営。スピード感のある取材と編集、時事問題への深い洞察力が必要です。

届ける：営業職

制作されたコンテンツを世の中に届け、ビジネスとして成立させるのが営業職の役割です。

販売・マーケティング

販売・マーケティングは、書店やオンライン書店との交渉、売り場作り、販売戦略の立案を担当。紙の本も電子書籍も含めて、どうすれば作品がより多くの読者に届くか、データを分析しながら戦略を練ります。

ライツ（権利ビジネス）

ライツ（権利ビジネス）は、講談社のコンテンツを多角的に展開する仕事です。キャラクター・ライセンスでは、グッズ化やアニメ化、ゲーム化の契約交渉、製作委員会の運営などを行います。

映像化ライツでは、ドラマや映画への実写化、舞台化、イベント展開などを手がけます。国際ライツは、海外の出版社や映画会社との版権交渉を担当し、日本のコンテンツを世界に届ける窓口となります。

講談社は北京、ニューヨーク、サンフランシスコなど複数の国や地域に現地法人を持ち、グローバル展開に積極的です。海外勤務のチャンスもある分野と言えます。

メディア・コミュニケーション（広告）

メディア・コミュニケーション（広告）は、講談社の雑誌やWebメディアに企業広告を掲載することで広告収入を得る仕事。データ分析を活用した運用型広告や、タイアップ企画の提案なども行います。

支える：専門職・管理職

コンテンツ制作を支える専門職も、講談社には多数存在します。

校閲

校閲は、原稿の誤字脱字や事実関係をチェックし、出版物の品質と信頼性を守る仕事。一見地味ですが、講談社の看板を支える重要な役割です。

デジタル・システム

デジタル・システムでは、新規デジタル事業の開発や社内システムの構築・運用を担当。出版社のDX推進を技術面から支えています。

写真スタジオ

写真スタジオは、社内に11のスタジオを擁し、雑誌の撮影から動画制作まで幅広く対応。クリエイティブの現場を技術面で支えています。

その他、法務・知財（契約書作成や著作権管理）、経理（予算管理や決算業務）、人事（採用や人材育成）といった管理部門も、会社全体の基盤を支えています。

新卒採用の選考プロセス

近年の定期採用は年間20～30名程度と、非常に狭き門です。選考プロセスには筆記試験、適性検査、複数回の面接があり、編集職志望者には企画プレゼンテーションが課されることもあります。

ここで問われるのは、本が好きかどうかではありません。「何を作りたいのか」「なぜそれを作る必要があるのか」を明確に語れるかどうか。自分の中にある「好き」や「面白い」を、他者に伝わる形にできる力が求められています。

募集は例年、大学3年生の秋から冬にかけて情報が公開され、翌年の春から初夏にかけて選考が進みます。ただし、スケジュールは年度によって変わることもあるため、採用サイトを定期的にチェックしておくことをおすすめします。

学歴や学部は関係ある？

講談社の採用において、特定の学部出身者が有利ということはありません。文学部、社会学部、法学部、経済学部など文系各学部はもちろん、理系学部や芸術系の出身者もいます。

ただ、志望する職種によって、大学で学んだことが活きる場面は確かにあります。

文学部や人文学系の学部なら、テキストを深く読み解く訓練ができます。批評的に文章を読む力は、小説や評論を扱う編集者の基礎体力です。

社会学部やメディア学部では、社会の動向を分析する視点が養えます。ライフスタイル誌や週刊誌の編集では、こうした視点が企画に直結します。

理系の知識は「ブルーバックス」のような科学系の書籍編集で強みになりますし、芸術系のバックグラウンドがあればビジュアル表現への理解が深まるでしょう。

結局のところ、どんなコンテンツを作りたいかによって、大学で身につけるべきものは変わってきます。

大学はどこがいい？

講談社本社は東京都文京区にあります。出版業界全体が東京に集中しているため、首都圏の大学に通うと、インターンシップや業界イベントへの参加がしやすいという利点はあります。

実際、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京大学といった首都圏の有名大学出身者が多いのは事実です。ただこれは、大学名そのものが評価されているというよりも、東京という立地が業界研究に有利であること、応募者層にこうした大学の学生が多いこと、選考で問われる思考力や発想力を持つ学生が集まりやすいことなどが影響していると考えられます。

地方の大学だから不利ということはありません。重要なのは、大学時代に何を経験し、何を学んだかです。読書サークル、文芸部、学生新聞の編集、個人ブログの運営、SNSでの情報発信など、編集という仕事につながる経験は、どこにいてもできます。
 

在学中に何をすべき？

学生時代にできる準備はたくさんあります。

何よりもまず、圧倒的な量の読書です。講談社の出版物に限らず、他社の本、海外の作品、ジャンルを問わず読むこと。編集者には幅広い教養と、何が面白いかを見抜く感性が必要です。漫画も小説も新書も雑誌も、すべてが学びの材料になります。

次に、何かを作る経験を積むこと。zine（少部数の自主出版物）を作る、書評ブログを書く、SNSで情報をまとめて発信する。媒体や形式は問いません。「誰かに何かを伝える」という行為そのものが、編集の本質です。

インターンシップも視野に入れましょう。講談社はインターンシッププログラムを実施していますし、他の出版社や編集プロダクションでの経験も貴重です。現場の空気を肌で感じることで、仕事への理解が一気に深まります。

時代の動きに敏感でいることも大切です。映画、音楽、アート、SNSのトレンド。あらゆる文化的な動きを自分なりにキャッチし、「なぜこれが流行っているのか」「次に来るのは何か」を考える習慣をつけておくと、企画力の土台ができます。

語学力も武器になります。特にライツ部門や国際事業に関わりたいなら、英語はもちろん、中国語や韓国語などのアジア言語ができると大きなアドバンテージです。

もし新卒で入れなかったら？

定期採用は倍率が高く、準備を重ねても必ず内定が得られるとは限りません。しかし、それで諦める必要はまったくありません。

講談社にはキャリア採用という道があります。編集プロダクション、他の出版社、Webメディア、あるいはまったく別の業界で経験を積んだ後に、改めてチャレンジできるのです。

実際、編集プロダクションで実務を学んだ後に大手出版社へ転職するケースや、Webメディアでデジタルコンテンツ制作に携わってから紙媒体の編集者になるケースは珍しくありません。デジタルマーケティングの知識、SNS運用のスキル、動画編集の技術など、一見出版と無関係に思える経験も、今の時代は大きな武器になります。

別の場所で働くことで、自分が本当にやりたいことが明確になったり、予想外のスキルを身につけたりすることもあります。一見遠回りに思える道が、結果的に自分だけの強みになることもあるのです。

講談社で働く魅力とは

講談社の最大の魅力は、コンテンツの多様性です。少年漫画も少女漫画も文芸書もファッション誌も児童書も科学書も、すべてを手がけている。この幅の広さは、編集者のキャリアにも柔軟性をもたらします。

編集職ひとつとっても、求められる専門性は全く異なります。コミック編集者には作家との深い信頼関係を築く力が、ファッション誌編集者にはトレンドを読む感性が、科学書編集者には専門知識を分かりやすく伝える技術が必要です。自分の興味や適性に合わせて、多彩なキャリアを描けるのは総合出版社ならではでしょう。

漫画のグローバル展開に積極的な点も見逃せません。国際ライツの仕事では、日本の作品を世界に届けるというダイナミックな仕事に挑戦できます。

一方で、100年以上の歴史を持つ企業ならではの組織文化もあります。伝統を大切にする面と、新しいことに挑戦する面が同居している会社です。その両面を理解した上で、自分がどう働きたいかをイメージしておくことも大切かもしれません。

編集者とはどんな仕事か

編集者は「本を作る人」ではありますが、自分で原稿を書くわけではありません。作家やクリエイターと協力してコンテンツを生み出し、それを読者に届ける。そのプロセス全体をマネジメントする仕事です。
企画の段階から関わり、作品の方向性について意見を交わし、時には宣伝やマーケティングまで考える。

漫画編集者なら、作家と何時間も打ち合わせをし、ネームに赤を入れ、締め切り前には深夜まで作業に付き合うこともあります。雑誌編集者なら、取材先を探し、ライターやカメラマンを手配し、記事の構成を練り、校正をチェックする。

華やかに見える一方で、地道な作業の連続でもあります。締め切りに追われ、調整業務に追われ、夜遅くまで働くことも少なくありません。それでも、自分が関わった作品が書店に並び、読者の手に渡り、誰かの心を動かす瞬間には、何にも代えがたい達成感があると言います。

講談社で働くということは、日本を代表する出版社の一員として、文化を作る仕事に携わるということです。その責任の重さと同時に、大きなやりがいがあるはずです。

学生アルバイトという選択肢

実は、講談社には学生アルバイトの制度もあります。大学生・大学院生を対象に、コミックやWebメディアの編集部、ライツなどの営業部署で業務補助を行う仕事です。

これは就職への直接的な優遇制度ではありませんが、出版社の現場を間近で見られる貴重な機会です。「この仕事は本当に自分に合っているのか」「どの職種が向いているのか」を確かめる材料になるでしょう。募集中の部署は時期によって異なるため、興味があれば採用サイトを確認してみてください。

最後に

講談社への道は、一本道ではありません。新卒で入社する人もいれば、別の場所で経験を積んでから中途で入る人もいます。どちらが正解ということはなく、どちらの道もそれぞれの価値があります。

ただ、どの道を選ぶにしても共通して言えるのは、早い段階から準備を始めることの大切さです。本を読み、何かを作り、世の中の動きに目を向ける。そして何より、「自分は何を伝えたいのか」を考え続けること。

出版業界は今、大きな変化の中にあります。紙からデジタルへ、国内市場から世界市場へ。この変化を楽しめる柔軟性と、新しい価値を生み出せる創造力。講談社が求めているのは、そういった資質を持った人材なのかもしれません。

目標への道のりは長く見えるかもしれませんが、一歩ずつ進んでいけば、必ず近づいていけるはずです。

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